相続問題・・おそらく誰もが直面する問題であると思います。
そこで、相続にまつわる問題のあれこれについて触れてみたいと思います。
第①回目は、株式の相続についてです。
株式を相続した場合、相続人は株主としての権利を行使することができるのでしょう
か。
株主が会社に対し有する権利として、会社から利益配当や株主優待などの経済的利益を受ける権利(自益権)と会社の経営に参加する権利(共益権)とがあります。
このうち、自益権について相続の対象となることに異論はありません。
では、共益権についても相続に対象となるのでしょうか。
この点について判例は、旧有限会社(現在は株式会社と同様の扱いとなります。)の
事例について、共益権は自益権と密接不可分の関係において全体として社員の法律上の
地位としての持ち分に包含されるとし、共益権の対象についても、相続に対象になると
しました(最判昭和45年7月15日)。
したがって、株式を相続した場合、相続人は株主としての権利(自益権も共益権も)を行使することができることになります。
では、株式を相続した相続人は、どのように株主としての権利を行使することになるのでしょうか。
株式会社においては、会社法上、株主名簿の作成が義務付けられており、そこに株主として記載されていないと権利行使を認めてもらえません。
<相続人が1人である場合>
そこで、相続人が株主としての権利を具体的に行使するためには、会社が振替制度を利用している場合には振替機関へ届出をし、株券が発行されている場合には株式会社に提示して名義書換をするなど、所定の手続をする必要があります。
<相続人が複数いる場合~株式の遺産分割対象性>
判例は、株式は、法定相続分に応じて当然に分割されるものではなく、共同相続人の
相続分に応じた準共有になるものと解されると判じしております(最判昭和45年1月
22日)。
すなわち、株式は、遺産分割の対象となると解されるということになります。
そこで、相続人間で遺産分割協議を行い、それにより株式を取得した者が上記のような所定の手続きを行い、株主としての権利行使を行う必要があります。
なお、相続人間で遺産分割協議が成立する前は、上記の通り、株主権は共同相続人の
準共有に属することになるので、共同相続人は、共有者全員によって議決権を行使する
か、または、株主の権利行使を行う者を1人定めて会社に通知を行い、その者が相続人
の代表として株主としての権利行使を行うことになります。
以上のように、相続財産として株式がある場合には、自益権の問題と共に、共益権の
問題もありますことをご留意いただきたく思います。
詳しくは、当事務所にご相談いただければと存じます。