交通事故ワンポイントコラム①では、損害の種類について記載しました。
今回は、物件損害のうち、「経済的全損」とは何か?という点について記載していきます。
交通事故に巻き込まれ、車両が損傷した場合、その修理のためには、修理費を支払わなければなりません。そして、その修理費は、交通事故を原因として発生した損害として、加害者に全額請求したいと考えるのが通常の感覚ではないでしょうか。
しかし、「経済的全損」と評価された場合は、修理費全額を加害者に支払ってもらうことが極めて難しくなります。
では、「経済的全損」とはどういう状態なのでしょうか。
「経済的全損」とは、事故前の事故車両の時価等より修理費用が上回る状態のことをいいます。
例えば、事故前の事故車両の価値が50万円であるにもかかわらず、修理費用として100万円かかる状態のことです。
事故前の事故車両の時価50万円< 修理費用100万円
東京高裁昭和56年8月27日判決によれば、経済的全損の状態になった場合には、「修理費用をもってその損害額となすべきではなく、損傷直前の時点における被害車両の価格にとってその損害額を算定すべき」であると判示しています。
すなわち、修理費用の方が事故前の事故車両の時価を超える場合は、事故前の事故車両の時価の限度で損害額とするという内容です。この考え方は、現在もなお、継続しており、経済的全損状態の場合には、加害者に修理費用を全額支払ってもらうことは、原則としてできません。
以上のように、経済的全損の場合、事故前の事故車両の時価を超える金額を損害として認めないということが原則です。
もっとも、裁判例の中には、個別具体的な事情を考慮した上で、事故車両の時価を超える修理費用の請求を認めているものもありますので、一度専門家に相談することをお勧めします。