交通事故に遭い、事故車両を修理に出されなければならない場合、その間、当該車両を使用することができなくなってしまいます。このような場合、レンタカーを借りることももあると思います。被害者としては、このレンタカー使用料(以下、「代車使用料」といいます。)も交通事故を原因として発生した損害として、加害者に対して全額支払ってもらいたいと考えるのが通常ではないでしょうか。
しかしなから、現実には必ず全額支払ってもらえるものではなく、代車を使用する必要性・相当性が認められた場合に、その範囲で損害として認められます。
それでは、「代車使用の必要性」とは、どのような事情を考慮して判断するのでしょうか。
例えば、事故車両を営業用に使用していた場合、当該車両を修理している間の代車使用は不可欠であろうと思われるのではないでしょうか。また、事故車両が自家用車であっても、住んでいる地域では車での移動が不可欠であるという状況であれば、代車使用が不可欠であろうと思われるのではないでしょうか。
他方で、事故車両が営業車であれ、自家用車であれ、当該車両以外に車両を保有している場合には、本当に代車を使用する必要があるのか?という疑問が生じることもあるでしょう。
また、住んでいる地域の公共交通機関が発達しており、たとえ自家用車を使用できなくとも公共交通機関で代替できる場合にも、本当に代車を使用する必要があるのか?という疑問が生じることもあるでしょう。
このように、代車使用の必要性は、事故車両を修理に出した間、当該車両が使用できないというだけで認められるわけではなく、事故車両の使用方法や居住地域の状況等、被害者の個別具体的な様々な事情を考慮して、判断されます。
代車を使用する必要性があったとして、代車を使用する期間はどの程度認められるのでしょうか。
代車使用料は、事故車両を修理に出している間、当該車両が使えない状況である不利益を是正するためのものですので、一般論としては、修理するために必要な期間が相当期間であるといえます。もっとも、事故車両が修理不可能な場合には、修理期間を考えることができないため、買換えに通常必要な期間を相当期間とします。
<代車を使用する相当期間>
修理可能な場合 → 修理するために必要な期間
修理が不可能な場合 → 買換えに通常必要な期間
一般論として、「修理するために必要な期間」として1週間から2週間、「買換えに通常必要な期間」として1か月程度とされています。もっとも、、「修理するために費用な期間」や「買換えに通常必要な期間」についても、個別具体的な事情を考慮したうえで、適切な期間が判断されます。
代車を使用する必要性・相当性が認められ得る状況において、未だ代車を使用しておらず、代車使用料を支出していない場合に、将来発生する代車使用料(以下、「仮定的代車料」といいます。)を加害者に支払ってもらうことができるでしょうか。
この点に関する裁判例は、代車を使用しなかった場合等、現実に代車使用料を支出していない場合に、仮定的代車料として損害を認めることはできないという結論が大多数です。
この裁判実務によると、現実に代車使用料を支払っていない場合の代車使用料の請求が認められる可能性は極めて低いため、代車使用料の請求をする場合には、現実に代車使用料を支出しておくことが重要になってきます。
以上のように、代車使用料の請求については、個別具体的な事情を考慮して判断されることが多いと言えます。
代車使用料についてお悩みの方は、一度専門家に相談することをお勧めします。