相続にまつわるあれこれについてのコラムです。
第③回目は、不動産の相続についてです。
不動産は、現金や預貯金と異なり、1つの不動産を複数に分けることは困難です。
また、不動産は、売却しない限りは直ちに金銭に換えることができません。
以上のような不動産の性質から、不動産の遺産分割協議においては、遺産分割の方法、すなわち、遺産の分け方が問題となることが多く、しばしば不動産の遺産分割について揉めることがあります。
今回は、不動産の遺産分割の方法についてどのような方法があるのかをご説明します。
不動産の遺産分割の方法には、以下の方法があります。
以下、被相続人Xさんの相続人が、子どもであるAさんとBさん2名(相続分2分の1ずつ)である事例を例にご説明します。
現物分割とは、個々の財産の形状や性質を変更することなく分割する方法をいいます。
不動産でいえば、甲土地をAさん、乙土地をBさんが相続するといった分割方法です。
遺産分割は、その性質上、出来る限り現物を相続人に受け継がせることが望ましいとされ、遺産分割の原則的な方法といわれます。
しかし、実際には、不動産が複数存在しなかったり、それぞれの不動産の価値が異なったりするので、現物分割のみで解決を図ることは難しいでしょう。
代償分割とは、一部の相続人に法定相続分を超える額の財産を取得させたうえ、他の相続人に対する債務を負担させる方法をいいます。
不動産でいえば、甲土地をAさんが相続する。その代償金として、AさんがBさんに対し、Bさんが本来相続できた相続分に相当する金額を金銭で支払うといった分割方法です。
これは、不動産を売却せずに解決ができることから、実際によく活用される分割方法といえます。
また、1の現物分割と併用して活用されることもあります。
もっとも、裁判所が代償分割の判断を下す(審判による解決)には、「特別の事情」がある場合に限るとされており、
①現物分割が不可能である場合
②現物分割をすると分割後の財産の経済的価値を著しく損なうため不適当である場合
③特定の遺産に対する特定の相続人の占有、利用状態を特に保護する必要がある場合
④共同相続人間に代償金支払いの方法によることについて概ね争いがない場合
である必要があります。
相続人間の協議(協議、調停による解決)の場合には、相続人間で自由に代償分割を合意することができます。
もっとも、不動産を売却せずに、他の相続人に対して相続分相当額を支払うのですから、相続人間で不動産の評価額を合意する必要があります。
そして、不動産の評価額は、分割時の時価といわれますが、「時価」は、実際には、不動産を売却してみないと分からないのです。
実際には分からない不動産の時価を、相続人間で話し合って決めなければならないので、しばしば、不動産の評価額について揉めることがあります。
なお、不動産の評価額については、次回のコラムにおいて解説します。
換価分割とは、遺産を売却などで換金した後に、価格を分配する方法をいいます。
不動産でいえば、甲土地を第三者に売却して、その売却代金をAさんとBさんで2分の1ずつに分割する方法です。
2の代償分割とは異なり、実際に不動産を売却しますので、不動産の評価額につき揉めることは少ないでしょう。
もっとも、不動産の売却に時間を要する場合もありますので、解決には時間を要する場合が多くなります。
共有分割とは、遺産の一部または全部を具体的相続分による物権法上の共有取得とする方法をいいます。
不動産でいえば、甲土地について、AさんとBさんで2分の1ずつの共有とする方法です。
この場合、共有状態を解消するためには、別途共有物分割手続によることになりますので、AさんとBさんで不動産の分割方法で揉めている場合、紛争の抜本的解決には資さないものとなります。
ですので、当事者が共有による分割を希望しており、それが不当であるとは認められない場合などに限定されるべきとされています。
以上のように、不動産の遺産分割の方法は、実際に事例に応じて様々あります。
遺産に不動産がある場合には、迅速な解決を図るためにも、まずはご相談ください。