営業車の場合は、通常緑ナンバーを取得しており、許認可が必要となります。そこで、営業車が交通事故に遭って使用できなくなったとしても、レンタカーを使用して営業することができません。このような状況にある以上、営業ができなかった期間は、被害車両が稼働していれば得られたであろう利益を得ることができなくなってしまいます。
そこで、交通事故によって営業車が損傷し、営業ができなかった場合において、営業ができなかった期間、被害車両が稼働していれば得られたであろう営業利益の損失を「休車損害」として、加害者に請求できる場合があります。
1 計算式
休車損害は、被害車両によって1日当たりに得られる売上額から稼働しないことによって
免れた経費を控除し、これに相当な修理期間または買換期間を掛けて算出します。
2 1日当たりに得られる売上額益
では、1日当たりに得られる売上額は、どのように算出するのでしょうか。これは、営業
内容や、車両の保有台数、遊休車(予備車両)の存在など、個別具体的な事情によって様々な計算が行われますが、一般的には、事故前3か月乃至1年間の売上実績を保有台数で割って計算します。
3 稼働しないことによって免れた経費(変動費)
経費の中には、減価償却費、保険料、駐車場使用料など、被害車両が稼働できなかったと
しても支出が免れない①固定経費と、燃料費や、オイル代、通行料、運転手の乗務手当な
ど、被害車両が稼働したことに応じて発生する②変動費があります。
被害車両が稼働していれば、売上額から②変動費を控除した金額が利益となるはずです。
そこで、休車損害を算定する場合も、1日当たりに得られる売上金額から②変動費を控除
すべきと考えられています。
なお、①固定経費については、被害車両の休車の有無にかかわらず支出を免れないもので
あるため、休車損害の算出時において、1日当たりの売上額から控除する必要はありませ
ん。
休車損害=(被害車両の1日当たりの売上高-変動経費)× 相当な期間
営業車が交通事故によって損傷し、被害車両が稼働できなかったとしても、事業者によっては、遊休車(予備車両)を保有している場合もあると思います。
遊休車(予備車両)がある場合は、たとえ被害車両が稼働できなかったとしても、遊休車(予備車両)を稼働させることで営業を行えるため、休車損害は認められません。
もっとも、遊休車(予備車両)が存在するようにみえても、運転者の手配ができずに稼働できない場合や、定期点検中で実際には稼働できない場合など、個別具体的な事情を検討しなければ、判断できな場合も多々あるので、注意が必要です。
休車損害が認められる期間は、被害車両を修理するのに相当な期間または買換えに必要な相当期間のことを指します。
この相当な期間については、基本的に、代車使用料における代車を使用する相当期間と同様に考えます。
以上のように、休車損害の請求については、金額の計算方法が複雑です。また、個別具体的な事情を考慮して判断されることも多いです。
休車損害についてお悩みの方は、一度専門家に相談することをお勧めします。