相続にまつわるあれこれについてのコラムです。
第5回目は生命保険の保険金についてです。
今回は、被相続人名義の生命保険であり、その受取人が相続人である場合を説明します。
この場合における基本的な考え方は、生命保険金請求権は、保険受取人である相続人の固有の財産に属し、被相続人の相続財産には属しないとされております。(ただし、相続税申告の際には、みなし相続財産として、課税対象にはなります。)
よって、遺産分割の対象とならないとものとされており、また、相続放棄をしても、保険金を受け取る権利があることになります。
保険金請求権は、受取人として指定された保険金受取人の固有の財産に属し、保険金請求権は、受取人である特定の相続人に帰属します。
この場合も、保険金請求権は、相続人となるべき者が固有の財産として取得するとされています(最高裁昭和40年2月2日)。
そして、この場合の各相続人の取得割合については、特段の事情のない限り、相続人が保険金を受け取るべき権利の割合を相続分の割合によるとする旨の指定も含まれているとされ、各保険受取人の有する権利の割合は、相続分の割合になるものとされています(最高裁平成6年7月18日)。
この場合、保険契約者は、保険事故が発生するまでは、保険受取人の変更をすることができます。
しかしながら、変更せずに保険契約者が死亡した場合、保険受取人の相続人が、固有の権利として保険金請求権を取得することになります。
すなわち、夫名義の生命保険につき、妻が保険金の受取人となっており、妻が先に亡くなっていた場合、妻の相続人が保険金請求権を取得します。
具体的には、当該夫婦に子供がいる場合には、その子供が妻の相続人として保険金請求権を取得しますが、子供がいない場合には、妻の両親が保険金請求権を取得(両親も亡くなっている場合には、妻の兄弟姉妹が取得)することになります。
なお、この場合の各相続人の取得割合は、法定相続分ではなく、平等の割合(民法427条)になるもとのされています(最高裁平成5年9月7日)。
想定外の方が保険金請求権を取得することになりかねませんので、この場合には、早めに保険金の受取人を変更しておくことをお勧めします。
この場合には、保険約款および保険法の規定によって受取人を判断することになります。
たとえば、保険約款に「被相続人の相続人に支払います。」との条項がある場合には、保険金の受取人が「相続人」とのみ指定されている場合と同様に、保険金請求権は、相続人となるべき者が固有の財産として取得するとされています。
このように、生命保険は、基本的には、保険金受取人の固有の財産になり、相続財産にはなりませんが、実際には、保険契約の種類や性質はさまざまであり、個別具体的に考えていくしかありません。(たとえば、養老型や貯蓄型の保険で、被相続人自身が受取人となっている場合には、被相続人が取得した保険金請求権は、被相続人の死亡によって相続財産になるでしょう。)
そこで、被相続人に生命保険があるという場合には、早めにご相談ください。