交通事故ワンポイントコラム⑤の記事で、交通事故で怪我を負った場合の治療費等の治療関係費について説明しました。
今回は、治療関係費のうち、近親者が付き添った場合の「付添看護費」について説明したいと思います。
近親者が被害者の入院や通院に付き添った場合、当該近親者から被害者に付添看護費を請求することは通常あり得ないでしょう。この場合、被害者が近親者に付添い費用を支払う状況が発生しないことから、被害者自身の損害というより、付き添った近親者自身の損害(労働力の提供等)と考えることもできます。
しかし、実務では、いたずらに当事者が増えることのわずらわしさから、これを被害者自身の損害として請求することを認めています。
そして、加害者に請求できる付添看護費は、大きく、1.入院付添費、2.通院付添費の2つに分かれます。
近親者の「入院付添費」とは、入院している交通事故の被害者に、被害者の近親者が付き添った場合に請求できる損害をいいます。
そして、近親者の入院付添費は、すべての場合に認められるわけではなく、付添いの必要性がある場合に認められるものです。
では、付添いの必要性とは、どのように判断するのでしょうか。これは、医師の指示または受傷の程度、被害者の年齢等により判断されるとされています。
つまり、医師の指示があれば、原則として、それだけで付添いの必要性が認められます。もっとも、医師の指示がない場合に付添いの必要性が認められないというものではなく、たとえ医師の指示がなくても、受傷の部位や程度によって、このような状況であれば客観的に付添いが必要であろうといえる場合には付添いの必要性が認められることになります。
このように、近親者の入院付添費を請求する場合は、可能であれば、医師の指示を受けておくということが、有益な事情となります。
なお、症状の程度や年齢等によって多少の幅はあるものの、近親者の入院付添費が認められる場合の金額は、実務上、1日当たり6500円とされています。
近親者の「通院付添費」とは、通院している交通事故の被害者に、被害者の近親者が付き添った場合に請求できる損害をいいます。
近親者の通院付添費も、前記した入院付添費と同様、すべての場合に認められるわけではなく、付添いの必要性がある場合に認められるものです。そして、付添いの必要性については、足の骨折や、体力が回復していない場合、幼児等で自分1人で通院できない場合等、社会常識上、付添いが必要といえるか否かという観点から判断されます。
なお、症状の程度や年齢等によって多少の幅はあるものの、近親者の通院付添費が認められる場合の金額は、実務上、1日当たり3300円とされています。
以上のように、近親者の付添費は、被害者本人の損害として、加害者に請求できる場合があります。もっとも、加害者や、加害者側保険会社によっては、近親者の付添費の支払いを争ってくることも多々あります。
近親者の付添費の請求に際してお悩みの方は、一度専門家に相談することをお勧めします。