性犯罪処罰規定に関する平成29年の刑法一部改正⑧

~シリーズ第8弾 被害者支援の観点から見た課題と展望 Ⅱ~

継続的な課題について

 今回の刑法改正法案の審議においては、議論がなされつつも、改正には至らなかった問題がいくつかあります。本稿では、そのうちの一つである「性交等同意年齢の引上げ」の問題についてとり上げます。

現行法の性交等同意年齢

 現行法における性交等同意年齢は13歳であり、13歳未満の被害者については、被害者の同意の有無を問わず犯罪が成立します(177条、178条2項参照)。

 

 この性交等同意年齢について、13歳より引き上げるべきではないかとの議論がありましたが、今回の改正法に盛り込まれることはありませんでした。

 以下に、積極・消極の両意見を紹介します。

 

性交等同意年齢の引下げに積極な意見の紹介

 以下、性交等同意年齢の引き上げに積極的な意見を紹介します。

 

・諸外国と比較すると、日本の刑法は、最も年齢が低い立法例の一つに属する。

 諸外国の例

  13歳 韓国

  14歳 ドイツ、イタリア、中国

  15歳 フランス

  16歳 オーストラリア、イギリス、シンガポール、ロシア

      オランダ、カナダ、スイス

  17歳 ニューヨーク州

 

・現行法の下では、児童福祉法や児童買春・児童ポルノ処罰法等において、児童(満18歳未満の男女)に淫行をさせる行為や児童買春が、児童の同意にかかわらず禁止処罰されており、年少者の性的自由は特別法によりすでに大きく制限されている(これは、引下げを行うことの許容性を論じています)。

 

性交等同意年齢の引下げに消極な意見の紹介

 以下、性交等同意年齢の引き上げに消極的な意見を紹介します。

 

・児童の保護の観点からは、刑法だけでなく、児童福祉法等の特別法や各自治体の条例を含めた法規全体として対処することが可能である。

 

・監護者わいせつ罪及び監護者強制性交等罪の新設により、被害者が18歳未満のケースについては、一定程度救済可能となっている。

 

~次回シリーズ第9弾のコラムの予定~

 次回の第9弾では、「被害者支援の観点から見た課題と展望 Ⅲ」として、「附則9条と法務委員会における附帯決議」について取り上げます。

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